学習上の注意
- 鉄骨製作管理技術者に求められる能力と知識
鉄骨構造の主な構造形式
架構形式による分類
- ラーメン構造
- 柱と梁を剛接合
- 柱・梁材の曲げで外力に抵抗
- 外力が加わって部材が変形しても両部材の交わる角度が変わらない
- 斜材がないので空間利用の自由度が高く、事務所、ホテル、商業施設(いわゆるビル物)に多い
- ブレース構造
- 柱と梁がピン接合
- 剛接合されていても水平力に対する耐力・剛性が不足する場合
- 引張ブレース
- 引張・圧縮ブレース
- トラス構造
- 細長い部材を三角形を単位として組み合わせて、部材の軸方向力で外力に抵抗する構造形式
- 上弦材 下弦材 斜材(ラチス材)
- 工場・体育館・展示場
- アーチ構造
- テンション構造
耐震設計上の構造形式による分類
- 耐震構造
- 建物の剛(かた)さと強さで地震に抵抗する構造
- 揺れ → 大
- ブレース
- 損傷 → OK
- 免震構造
- 建物の特定の層(基礎部分あるいは最下層が多い)を他の層に比べて極端に柔らかくしたうえでエネルギー吸収装置を設けて、建物全体に入る地震入力の大半をこの部分で吸収させる構造
- isolation 絶縁
- 制振構造
- ダンパーと呼ばれるエネルギー吸収装置を建物内部に適切に配置することによって、建物全体の地震時の応答を低減させ、建物の耐震安全性を確保する構造
- 変形 → 小 : 被害 → 小 : 補修 → 少
鋼材の性質
比重
- 軟鋼→7.85 1㎤→7.85kg
- コンクリート→2.3g アルミニウム→2.7g
化学成分
- 鋼は鉄(Fe)以外に炭素(C)、けい素(Si)、マンガン(Mn)、りん(P)、硫黄(S)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、銅(Cu)、モリブデン(Mo)、バナジウム(V)、ホウ素(B)
- 5元素
- C、Si、Mnは有用な元素
- P、Sは通常は鋼材の特性を低下させるが製法上取り除くことが難しい元素
鋼材の種類
材質による分類
- 建築構造用圧延鋼材(SN材)
- 建築鉄骨に要求される性能と溶接性を兼ね備えた建築専用の鋼材規格
- A種
- 主要構造物以外の小梁や間柱など弾性範囲で使用する部材
- 溶接性は考慮されていない
- 軽微な溶接や高力ボルト、ボルトを用いて接合
- B種
- 溶接性が考慮
- 柱・大梁など塑性変形能力が要求される部材に使用
- 溶接性が考慮
- C種
- さらに板厚方向に大きな引張応力を受ける部材に使用
- P、Sの上限値を低くするとともに、板厚方向の絞り値を規定
- 大地震の際などに必要な塑性変形能力を持つように降伏比(YR)の上限を80%と規定
- 降伏点の上限値が設けられている
- シャルピー吸収エネルギーの規定 27J以上
- 炭素当量(Ceq)もしくは溶接割れ感受性組成(PCM(CMは小文字))の上限値を規定 ラメラテア対策のためにP、Sの上限値を厳しく規定
- 建築鉄骨に要求される性能と溶接性を兼ね備えた建築専用の鋼材規格
- 一般構造用圧延鋼材(SS材)
- PおよびSの含有量のみが制限され、C、Si、Mn含有量の規定がない
- 溶接割れを生じたり、また、靭性も一般的に劣るので、重要な溶接構造物で靭性を期待する部位に使用し、溶接接合するのは好ましくない
- 溶接構造用圧延鋼材(SM材)
- 引張強さ400N/mm²級から570N/mm²級までの綱がある
- 強度と同時に溶接性を考慮した鋼材
- 化学成分はC、Si、Mn、P、Sについて規定
- SS材に比べて規定項目が多く、溶接性に優れているが、SN材と異なり炭素当量は規定されていない
- シャルピー吸収エネルギー B種→27J C種→47J
- 一般構造用炭素綱鋼管・角形鋼管(STK材、STKR材)
- 一般構造用軽量形鋼(SSC材)も含めてSTK、STKR材は鋼板を冷間成形して製造されたもの
- 軟鋼(SSC400、STK400、STKR400)はSS400に準ずる材質が規定
- 高張力鋼(STK490、STKR490)はSM490Aに準ずる材質が規定
- 建築構造用炭素鋼管(STKN材)
- 従来の一般構造用鋼管(STK)を参考にして、SN材に対応するものとして新しく制定された
- SN材のB種に準拠するものとして、STKN400B、STKN490B
- SN材のA種と同じ性能であるが溶接しても良いとしたSTKN400W
- C種は特に定めていない
- 建築構造用冷間成形角形鋼管(BCR、BCP材)
- 冷間成形角形鋼管
- 建築構造用冷間ロール成形角形鋼管(BCR) 国土交通大臣の認定品
- 基準強度(F値)
- 400N/mm²級 → 295N/mm² ※BCP材とは異なる
- 490N/mm²級 → 規定なし
- 400N/mm²級 → 295N/mm² ※BCP材とは異なる
- 降伏比(YR)の上限 90%
- 基準強度(F値)
- 建築構造用冷間ロール成形角形鋼管(BCR) 国土交通大臣の認定品
-
- 建築構造用冷間プレス成形角形鋼管(BCP) 国土交通大臣の認定品
- 基準強度(F値)
- SN材と同様
- 400N/mm²級 → 235N/mm²
- 490N/mm²級 → 325N/mm²
- 降伏比(YR)の上限 80%
- 基準強度(F値)
- 一般構造用角形鋼管(STKR) JIS規格品
- 建築構造用冷間プレス成形角形鋼管(BCP) 国土交通大臣の認定品
- 冷間成形角形鋼管
- 溶接構造用遠心力鋳鋼管
- SCW-CF(鋳鋼)材として規定
- 鋳鋼の基準強度(F値) 建築基準法→235N/mm² 国土交通大臣の一部認定→325N/mm²以上
- 490N/mm²級と520N/mm²級があり、板厚は90mmまで用意
- 耐候性や耐火性
- 建築構造用TMCP鋼材
- TMCP鋼は溶接性向上を目的
- 熱加工制御法(Therme Mechanical Control Process)と呼ばれる制御圧延と圧延後の加熱冷却と組み合わせた技術により製造された鋼
- 建築、船舶、海洋構造物などの分野に広く実用化
- 建築物の大型化・高層化に伴い、厚肉の鋼材の使用が増加しているが、製鋼上、厚い板の降伏点は低めの値になることから、SN490材等のJIS規格においては、板厚が40mmを超える場合、降伏点の下限値として板厚40mm以下より約10%低い値を与えている
- 一方、鋼材の強度上昇は合金元素の増加によって達成されるが、それに伴い炭素当量が大きくなり、溶接性が損なわれる
- 高強度の鋼材は降伏比が高くなる傾向にあった
- 建築構造用TMCP綱では、厚さが40mmを超え、100mm以下の鋼板の母材および溶接部の基準強度は厚さ40mm以下の鋼材の規定値と等しい
- Ceq、PCM(CM小文字)が低く規定されており、優れた溶接性を有している
- 建築構造用590N/mm2級鋼材(SA440)
- TMCP鋼と同様に、鋼材の製造法の改善によって従来の問題点を解決した新しい高張力鋼
- 従来の570N/mm2級鋼に対し、降伏点や引張強さの上限を規定し、降伏比を低く抑え、しかも溶接性を改善した鋼材
- 従来の高張力鋼に対して「高性能鋼」と呼ばれる
- 日本鉄鋼連盟製品規定による国土交通大臣の認定品
- SA440の鋼種はSN規格に準拠し、SA440BおよびSA440Cの2種類
- 板厚の範囲は19〜100mm
- 圧延した鋼材の熱処理を従来の二段熱処理から三段熱処理とした
- 圧延および熱処理工程での温度コントロールを一層精密に行うことが可能となった
- 耐火綱
- 火災時の高温での耐力を普通鋼よりも高めた鋼材
- 常温時の性質は一般の鋼材と同等
- 高温時の降伏点または耐力(Yp)が通常規定値の2/3まで低下
- 一般鋼→350℃〜400℃
- 耐火綱→600℃以上
- SN、SM、STK材およびSTKR材について400N/mm²級と490N/mm²級の2種類がそれぞれ用意されている
- 溶接構造用耐候性熱間圧延鋼材(SMA材)
- SM材をベースに銅(Cu)、クロム(Cr)を添加して、耐候性を高めている
- 引張強さは400、490、520、570N/mm²級
- SM材と同様、A、B、Cの3種類
- さびが極めて緻密で数ヶ月〜1年後には全表面を覆い、それ以降のさびの進行を食い止める
- 建築構造用ステンレス綱
- SUS304A 基準強度F=235N/mm²
- SUS316A 基準強度F=235N/mm²
- SUS304N2A 基準強度F=325N/mm² SN490同等
- SCS13AA-CF 基準強度F=235N/mm²
- 体力の設定にあたっては0.1%オフセット耐力として規定
溶接接合
溶接継目の種類と溶接継手の形式
- 完全溶込み溶接
- 接合する2部材の間に開先を設けて溶接する
- 母材の規格強度と同等以上の強度が得られる
- 部分溶込み溶接
- 板厚方向の溶込みが部分的
- 主としてせん断力を伝える部材に用いられる
- 隅肉溶接
- 部材の形を保持するのが容易
- 溶接変形も完全溶込み溶接よりは少ない